あるキャリアコンサルタントさんが自分の職務を全うしている?問題
話題のこの記事を読んでみた。
一読した直後は "何を言ってるんだ!?" と思ったが、この方の主張がなんだったのか気になって、もうちょっと読んでみた。
まずは冒頭の「アルバイト感覚」について書かれたこの部分。
決められた時間の中で、業務をこなす。こういったアルバイト感覚、学生感覚が抜けきっていないうちは、組織に所属しているという意識が根付くまでに時間がかかります。新入社員が「定時だから帰る」という行動は、まさにその意識の延長線上にあります。
時間が基準になっている。時間内で仕事をするのがアルバイト感覚で、時間を超えるとアルバイト感覚ではないという線引きである。
続く段落では、アルバイト感覚ではないときの働き方が出てくる。
アルバイトの延長線上で働いている、と先述しましたが、もちろんアルバイトでも規定のシフト時間を過ぎてからも必要に応じて主体的に関わろうとする人もいます。
この段落では所属意識について書こうとしているが、 「シフト時間を過ぎて」のように、やはり時間外かどうかという点に触れている。
この時間に関するこだわりは、記事の後半にも登場する。
居心地が良い場所には長時間いることが可能です。しかしそれが惰性で「ただ、いる」というのでは誰も得をしません。個人的に付き合いのある某企業の責任者は、「自分が帰らないと周りが帰りにくいから」と、効率的に仕事を終わらせる工夫をしていると語ってくれました。
仕事に対する効率化は、周りが帰りやすくするための行為として出てくる。
一方、定時以降まで残る社員については、次のように描かれている。
逆に多くの時間を残業に費やしている中堅以上の社員は、所属意識だけでなく「居場所」を会社に求めている場合があります。ただ単に家に帰りたくない場合や、家庭の中で居場所がない場合。少し早く仕事が終わっても、まっすぐに帰らずに周りを食事や飲み会に誘う上司。これらは定時に帰るトンデモ新入社員とは、正反対だと言えます。
つまり会社がホームとなっており、家や家庭がアウェイという状況なのです。実際に10年程前に私自身が会社勤めをしていた際、タイムカードは退社時間でしっかりと打刻していたものの、毎日のように深夜まで雑談をしていたり、部署の誰かを飲みに誘う上司もいました。
定時後に仕事をしているかどうかではなく、会社にいるかどうかが「定時に帰るトンデモ新入社員とは、正反対」であるとしている。
では、仕事そのものについてはどう考えているのか?それを探るのは次の段落だ。
また、新入社員に残業が必ず必要なのかは状況によって異なります。しかし、新入社員は経験のある社員に比べると、仕事のスキルが乏しいのは仕方ありません。状況によってはスキルを時間で補うことも必要です。例えば納期のある業務を任されたり、締め切りのある依頼をされた場合には定時だからと投げ出さずに、上司や先輩社員に“報連相”するなどの必要があります。
ここで挙げられている例から意味を取ると、「仕事のスキルが乏しい状態」とは「締め切りがある依頼を、定時だからという理由で投げ出す」ことであり、「時間で補う」とは「上司や先輩社員に“報連相”などする」ことである。
文章の意味はわからないが、定時という単語にはマイナスのイメージ、時間という単語にはプラスのイメージを持っているようである。
ここまで読んでいっても、残業することが会社や社員の利益につながっていない。むしろ仕事のことに触れようとすると、途端に内容が怪しくなっている。そしてひたすら "残業しない新入社員はトンデモ社員" と言い続ける。
記事の大半はこんな調子で、誰のための話なのかはっきりしない。
しかしよく見ると、途中にこう言う記述がある。
上司世代と若者世代の所属意識の違いは、「どこに」居場所を求めているかの違いでもあります。これは単純に自宅や実家という場所ではなく、どの居場所に所属意識を置いているかということです。
(中略)
しかしそれでは、いつまでも会社への所属意識は芽生えません。それによって人間関係が深まらず最悪の場合、居心地の悪さで仕事を辞めるリスクにつながります。
さらに、記事の最後ではこう書かれている。
なぜならトンデモ新入社員をすぐに見切ってしまったのでは、会社の離職率は上昇していく一方であり、離職率の高い会社や未公開の会社は特別人気企業でもない限り応募もされない状態に陥ります。
つまりこういう思考展開だ。
1:定時ですぐ帰るのは居心地が悪いからだ。
2:居心地が悪い社員は、やがてやめてしまう。
3:離職率が高くなると、応募もされない状態になる。
どうしてこう言う話をしているのか?なぜならこの方は「中小企業向け集客採用コンサルタント」だったのだ。
なるほど。
しかし、その解決策として「定時で帰らせないようにする」というのがコンサルティングなのだとすると・・・。