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「在宅勤務者をカメラで監視 」の記事、記者は何を理解して書いているのか?問題

多くの人が何か一言言いたくなる、パソコンの前に担当者がいるかカメラで確認できる新システムのこの記事。

www.nikkei.com

一読すると「導入する企業は、本来目指すべき目的を見失ってるんでは!?」という印象を受けるシステムだが、よく読んでみると実は記事自体がそもそもとっちらかっているように感じる。

 

記者は、該当システムのことをこの言葉で表している。

「社員がパソコンの前にいることをカメラで確認し、勤務時間に反映するシステム」

そしてこのシステムの目玉であるカメラからの映像に関しては、「在席・離席を区別するためだけに使い、システムの管理画面には登録した顔の画像しか表示しない」らしい。

 

さて、この仕組みを開発したキヤノンITSに寄せられた顧客の声は、次のようなものだったと書かれている。

1:きちんと仕事をしているか確認ができない

2:シェアオフィスを利用している場合に、他社の人にパソコンをのぞかれていないかが気になる

 

在席・離席の区別しかしない映像で、2はどのように解決しているのだろうか?後ろから未登録の顔が覗き込まれていることを検知するのだろうか?それに対する疑問は記事には記述されていない。

 

また、1の「きちんと仕事をしていない」の内容については、次の2つの例が挙げられている。

A : 表計算ソフトの使い方が分からずに家族に聞きながら一緒にやっていた

B : 子育てなどで頻繁に離席して決まった勤務時間に仕事をしていない

 

これも、このシステムではAは未解決のままで、Bしか解決していないように思われる。

 

実際に先行導入したイグアスという会社の社長は、次のように語っている。

・「働きぶりを直接見られず、目標を適切に設定できているかも分からなかった」

・仕事を評価してもらえる意識が生まれて否定的な印象は減っているという。

”パソコンの前にいることをカメラで確認し、勤務時間に反映するシステム”を導入してたことで、テレワーカーに”仕事を評価してもらえるという意識が生まれている”と語っているのだ。テレワーカー達はどのように動き、何を評価されていると感じているのだろう。

 

この取材を終えた記者のまとめは以下だ。

結果評価なら離席してもかまわないが、時間給を採る企業は在席してもらわないと困る。結果で評価する人事制度がないと自由な在宅勤務制度は運用しにくいことを裏付けている。

1行目は時給制で雇用している限り必要なことだ。2行目に関して「自由な在宅勤務制度」という単語が出てきているが、「結果で評価」や「自由な」とはどういう意味なのだろうか?今回の記事ではテレワーカーへの取材はなく、あくまで開発及び導入側の話だけを記載しており、それに関する記者と読み手の共通認識を確立できてはいない。「裏付けている」と締めくくっているが、そもそも「結果で評価する人事制度がない」かどうかを記事内で一言も触れていない。

 

このように、システムに関する疑問は回収しないまま、記者自身の印象を唐突に記述しているように読めるのだが、どう感じただろうか?

 

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