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「避難準備情報」の名称変更が、何を伝えたくて変更したのかわからない問題

朝なんとなくラジオを聴いていると、「避難準備情報」の名称変更について報じていた。

森本毅郎・スタンバイ!

radikoのタイムフリーは1週間しか残らないので、2016/1/23前後でリンク切れになるので注意を。

 

なぜ名称が変更されることになったかというと、昨年の台風による水害がきっかけだったようだ。「避難準備情報」が高齢者等が避難を開始する段階だと認識されなかったために避難が遅れて、人が亡くなる事態が発生してしまった。そこで、名称を変更することになったらしい。

この放送の中では専門家に意見を求めていて、その方は「名称変更をしてわかりやすくしようという試みは認めるが、まだわかりにくい」と指摘していた。

 

 

内閣府のページを確認

この件に関して内閣府が防災情報のページで掲載していたので、内容を見てみた。

「避難準備情報」の名称変更について(平成28年12月26日公表)

自然災害が発生する危険が出てきたとき、これまで次の3種類の避難情報があった。

・避難指示

・避難勧告

・避難準備情報

これらが何を意図したものかわからないので、次のように変更したらしい。

・避難指示(緊急)

・避難勧告

・避難準備・高齢者等避難開始

「説明が足りていなかったから理解されなかった」という理解なのか、単純に文字を追加している。

 

しかし、内閣府が伝えていないのは、彼らの想定する意図そのものだ。

 

まずこれは何をするために発する情報なのかというと、人的被害を最小に食い止めるためだろう。ではなぜ3種類である必要があるのか?その意図が明らかにしようとしていない。

この3つの内容を見てみると、次のようになっていた。テキストは先ほどのサイト掲載の図から取得している。(災害の進行状態に合わせ、順序を逆にした。)

 

1:避難準備・高齢者等避難開始

 いつでも避難ができるよう準備をしましょう。身の危険を感じる人は、避難を開始しましょう。避難に時間を要する人(ご高齢の方、障害のある方、乳幼児をお連れの方等)は避難を開始しましょう。

 

2:避難勧告

 避難場所へ避難をしましょう。地下空間にいる人は、速やかに安全な場所に避難をしましょう。

 

3:避難指示(緊急)

 まだ避難していない場合は、直ちにその場から避難をしましょう。外出することでかえって命に危険が及ぶような状況では、自宅内のより安全な場所に避難をしましょう。

 

このページの説明によれば、3の状態は「人的被害の危険性が非常に高まった場合」とされている。避難というには手遅れで、なんとか生き延びて!とでもいう状態だ。内閣府は、2の段階で多くの人が避難していることを想定していると言える。

 

 

適切な言葉が選ばれているのか?

辞書には、勧告=「当事者に、こういう処置をしたほうが良いと(多少とも)公的なしかたで告げ(説い)て勧めること。」とある。指示は「こうせよと指図(さしず)すること。」らしい。

内閣府は「人に指示しなくてはならないのは、最終段階だ」と考えているようだ。確かに、政治などの視点からは適切な態度かもしれない。しかし人の命を救うために伝える文言選びとしてこれは適切なのだろうか?

 

そもそも、この情報が何段階あるのかがこの言葉ではわからない。「勧告」という言葉だけを聞いて、3段階のうちの2段階目にあるとわかるだろうか?

 

言葉の主体が一定しないことも、行動との結びつきをわかりにくくしている。避難や準備というのは、逃げる人が主語だ。それが勧告や指示は発令する市町村が主語になっている。人に逃げてほしいのであれば、その人がどのような行動をするのかで統一すべきではないだろうか。(変更前は「〜情報」となっていて、もはや何がしたいのかわからなかったが。)

 

さらに、最終段階であるはずの言葉「避難指示(緊急)」だが、このカッコがついたことにより、カッコなしがあるのではないか?という連想も生んでしまう。「避難指示(応急)」や「避難指示(火急)」などがあると思ってしまう人がいないとも限らない。

 

 

状況に適した言葉選びが必要

避難しなければ命に関わる状況というのは、それこそ緊急だ。そんな異常事態の時に、どういう意味?などと考えさせるのは無駄な行為だ。東日本大震災を教訓にして、地震の速報では津波の恐れがある場合「すぐ逃げて!」という解釈の幅がない言葉に変更されている。

すでに避難準備などの言葉が浸透してきているからなどの理由で言葉を足したようだが、言葉ではなく意図が浸透しているのかを再確認してほしいものだ。

 

 

伝え方が9割

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